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スライド条項とは|全体・単品・インフレの違いと請求後の流れ

公開日:  最終更新日:  直感日報 編集部 約 10 分で読めます

スライド条項とは|全体・単品・インフレの違いと請求後の流れ

スライド条項は、公共工事標準請負契約約款 第 26 条にある全体・単品・インフレの 3 つの請求権です。26 条が書いている数字は「十二月」と「千分の十五」の 2 つだけで、1%・残工期 2 か月・7 日・14 日は国土交通省直轄工事の運用です。

この記事でわかること
- 約款 26 条 1 項の主語は「発注者又は受注者」で、要件は契約から「十二月を経過した後」の賃金水準・物価水準の変動(約款)
- 同 2 項は、変動前残工事代金額の「千分の十五を超える額」について変更に応じると定める(同)
- 標準約款の 3・7・8 項の日数は「〇日以内」の空欄で、国交省の工事請負契約書は 8 項に「7 日以内」と記入している(国交省 規定)
- 国交省直轄のインフレスライドでは、発注者が請求日から 14 日以内に出来高確認を行う(国交省 運用マニュアル 5.)
- 単品スライドにインフレスライドのような基準日はなく、工期内に調達した該当材料が対象で、部分払で引き渡した材料は原則として対象外(中国地整 FAQ No.28)

スライド条項とは — 約款26条にある全体・単品・インフレの3つ【早見表】⁠

スライド条項とは、契約後の賃金や物価の動きで請負代金額が不適当になったとき、相手方に変更を請求できる約款 26 条の定めです。

スライド(約款26条)約款が決めていること国交省直轄の運用
全体(1〜4 項)契約から十二月経過後・千分の十五を超える額工期12か月超・残工期2か月以上・残工事費の1.5%
単品(5 項)主要な工事材料の著しい変動(数字なし)残工期2か月以上・対象工事費の1.0%
インフレ(6 項)急激なインフレ又はデフレ(数字なし)残工期2か月以上・残工事費の1.0%

表の中央の列は中央建設業審議会が決定した約款の本文から、右の列は国土交通省の規定の比較表から引いた語です(中央建設業審議会決定・国土交通省掲載 公共工事標準請負契約約款 第 26 条〔令和 7 年 12 月 2 日改正を含む現行版〕、「工事請負契約書における請負代金額変更の規定(スライド条項)」・2026-09-25 実読)。

1 項の原文はこうです。

発注者又は受注者は、工期内で請負契約締結の日から十二月を経過した後に日本国内における賃金水準又は物価水準の変動により請負代金額が不適当となったと認めたときは、相手方に対して請負代金額の変更を請求することができる。

主語が「発注者又は受注者」なので、増額だけの制度とは限りません。5 項の単品も 6 項のインフレも、主語は同じです。

国土交通省 中国地方整備局の FAQ No.30 は、単品スライドの問いに対し、物価が下落したときは「発注者から協議する」と答えています(「スライド条項に関するFAQ」令和 8 年 7 月時点・2026-09-25 実読)。

条によって入口も違います。図面どうしや図面と現場の食い違いから始まるのは 18 条の確認請求で(設計図書の優先順位の記事)、26 条は賃金や物価という工事の外の動きから始まります。

全体スライド — 約款に書いてある数字は「十二月」と「千分の十五」だけ⁠

約款 26 条に数字があるのは、1 項の「十二月」(12か月)と 2 項の「千分の十五」(1000分の15)だけです。2 項は後段でこう定めます。

(変動前残工事代金額と変動後残工事代金額)との差額のうち変動前残工事代金額の千分の十五を超える額につき、請負代金額の変更に応じなければならない。

千分の十五は「超える額」を変更するための負担の線引きで、請求の要件ではありません。要件は 1 項の「十二月を経過した後」と「不適当となったと認めたとき」です。

残工事を切る時点も約款が決めています。2 項は変動前残工事代金額を、請負代金額から「当該請求時の出来形部分に相応する請負代金額」を控除した額と定義し、3 項は「請求のあった日を基準とし」と続けます。

国土交通省の規定は、全体スライドの対象を「工期が 12 ヶ月を超える工事」で「残工期が 2 ヶ月以上ある工事」とし、受注者の負担を「残工事費の 1.5%」としています(同)。1.5% は千分の十五と同じ割合で、工期と残工期の線は国交省直轄の運用です。

一度変更したあとも、4 項により再び請求できます。その場合は、直前の変更で基準とした日から十二月を数えます。

単品スライドとインフレスライドの違い — 「1%」は約款ではなく直轄の運用⁠

5 項にも 6 項にも「1%」の文字はなく、1% は国交省直轄工事の運用で決まっている数字です。5 項の要件は「主要な工事材料」の価格の「著しい変動」、6 項は「急激なインフレーション又はデフレーション」で請負代金額が「著しく不適当」となったときです。

違いは 3 つに分かれます。

  • 対象 — 単品は主要な工事材料の価格で、労務単価と機械損料・賃料は対象外。インフレは労務単価も含む(FAQ No.21・22)
  • 性格 — インフレは「中間修正的な変更」、単品は「精算的な変更」。併用でき、申請の順番は問わない(FAQ の第 1 問)
  • 基準日 — インフレにはあり、単品にはない(冒頭の 5 行目)

受注者の負担は、国土交通省の規定で単品が「対象工事費の 1.0%」、インフレが「残工事費の 1.0%」です(前掲 規定)。インフレの 1% は「建設業者の経営上最小限度必要な利益まで損なわないよう定められた『1%』を採用」と説明されています(同)。

単品の 1.0% をどの金額に掛けるかについて、FAQ No.23 は部分払い等の出来高部分を除き、単品スライド適用前の最終的な「請負代金額」が対象になると答えています。

数字の出どころが分かったら、次は請求したあとに受注者が何を出すかです。

請求したら受注者が出すもの — 出来高の書類か、購入実績⁠

請求後に受注者が出す書類は、インフレスライドなら出来高の書類、単品スライドなら購入実績です。

インフレで出すのは「工事出来高内訳書」または「実施工程表付き工事履行報告書」で、これを基に発注者がスライド額を算定して協議します(FAQ No.4)。前者の中身は出来高報告書の記事、後者の実施工程(%)は工事履行報告書の記事にあります。

単品で出すのは「対象数量、搬入・購入等の時期、単価購入価格及びそれが証明できる納品書、請求書、領収書」です(FAQ No.5)。請求の時点では証明書類を付ける必要はなく、品目ごとの価格上昇分が請負代金額の 1.0% を超えると見込まれれば請求できます(FAQ No.27)。

令和 8 年 4 月 17 日には、国土交通省が令和 4 年からの単品スライドの運用を事務連絡で再周知しました(事務連絡「単品スライド条項の運用について」・北海道開発局掲載・2026-09-25 実読)。購入価格が適当であることを証明する書類を出せば、購入した月の物価資料の単価より高くても「実際の購入価格」で変更できる、という国交省の発注工事の運用です。

都道府県などほかの発注者には、この運用を参考にするよう求めています。

単価をどの月の掲載値で読むかは、搬入と購入の月で決まります。鋼材類は「現場(または工場)搬入月」、燃料油は「購入した月の翌月」、コンクリート類とアスファルト類は「現場搬入月」です(FAQ No.36)。

搬入した月と数量は、搬入したその日に現場で決まっています。書き留める先には、直感日報(建設・店舗など現場チーム向けの日報管理サービス)の搬入した資材と数量をその日のうちに残せる日報が使えます。

スライドの算定と請求は、発注者と受注者が契約書に沿って進める手続きで、日報の中では完結しません。その日の施工数量と搬入した資材の品目・数量、監督員や納入先と口頭で確かめたことは、日報の側に日付つきで残せます。

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スライド額の算定や、算定表・請求書・協議書などの様式の作成と提出は、直感日報ではできません。物価資料や実勢価格の参照、単価・原価の管理、見積・積算・請求書発行、会計ソフトや原価管理システムとの連携もできません。

日報は納品書・請求書・領収書の代わりにもなりません。労務単価の話は出てきますが、出退勤の打刻や勤怠管理、賃金計算の機能も持っていません。

書類の次は、請求してから何日で何が起きるかです。

請求後の日付 — 7日・14日・残工期2か月は国交省直轄の運用⁠

請求後の流れを日数で決めているのは国交省直轄の運用で、標準約款が置いているのは「〇日以内」という枠だけです。3 項・7 項(協議が整わないとき発注者が定める期限)と 8 項(協議開始日の通知の期限)は、どれも空欄のままです。

8 項の「7日以内」は冒頭の 3 行目のとおりです。3 項・7 項は、国土交通省の運用マニュアルが注で「原則として、『14』と記入する」としています(大臣官房技術調査課「インフレスライド条項 運用マニュアル(暫定版)」平成 26 年 1 月〔当時 25 条・現行 26 条〕・2026-09-25 実読)。

マニュアルの定めを、請求のあとの順に並べると次の 5 段です。

  • 請求日 — スライド協議を書面で請求した日(2.(1)・3.)。書面の器は工事打合せ簿の記事の「協議」です
  • 基準日 — 請求日を基本とし、請求日から 14 日以内で協議して定める日も可。残工期は基準日から 2 か月以上(2.(2)・1.(1))
  • 協議開始日の通知 — 発注者が受注者の意見を聴いて定め、請求日から 7 日以内に書面で通知(3.)
  • 出来高確認 — 請求日から 14 日以内(冒頭の 4 行目)
  • 変更契約 — 精算変更時点で行うことができる(7.)

約款 8 項のただし書きは、発注者が期限内に協議開始の日を通知しないとき、受注者が協議開始の日を定めて発注者に通知できるとしています。9 項は、協議が整わなかったことなどを理由に、発注者が受注者を不利益に扱うことを禁じています。

スライド協議を請求してからの 5 つの時点を、請求日から工期末までの横の帯に並べた図。請求日・基準日・協議開始日の通知・出来高確認・変更契約の札と、残工期 2 か月以上の区間を示す

その工事の日数は、契約書の 3・7・8 項と発注者の運用で決まります。

毎年3月の労務単価改定でどちらになるか — 特例措置とインフレスライド⁠

契約日が新しい労務単価の適用日より前か後かで、扱いが分かれます。国土交通省の報道発表によると、令和 8 年 3 月適用の公共工事設計労務単価は、全国全職種単純平均で前年度比 4.5% の引き上げで、14 年連続の上昇です(報道発表・令和 8 年 2 月 17 日・2026-09-25 実読)。

翌日の国土交通省の通知(国不入企第 30 号)は、直轄工事の扱いとして次の 2 つを示し、各団体に参考とするよう求めています(不動産・建設経済局長通知・令和 8 年 2 月 18 日・千葉市掲載 PDF・2026-09-25 実読)。

  • 3 月 1 日以降に契約する工事で、旧労務単価で予定価格を積算したもの → 新労務単価に基づく請負代金額に変更する
  • 2 月 28 日以前に契約し、3 月 1 日に工期の始期が来ていない工事 →「賃金等の変動に対する工事請負契約書第 25 条第6項の運用について」(平成 26 年 1 月 30 日付け・当時 25 条・現行 26 条)の記 1.(1) 及び 2.〜8.(4.(3) を除く)を準用する

準用先は運用マニュアルではなく、この通達です。同じ通知は地方公共団体への要請として、既契約工事でもスライド条項の適用や受注者からの協議の申出等に適切に対応するよう求めています(同)。

千葉市は、3 月 1 日以降に契約を締結する工事を特例措置とし、「令和8年2月28日以前に契約を締結した工事で、残工期が2ヶ月以上あるもの」をインフレスライド条項の対象としています(千葉市「特例措置・インフレスライド条項の適用(R8.3~)」更新日 2026 年 3 月 5 日・2026-09-25 実読)。

北九州市は、特例措置とインフレスライド条項の適用を「国に準じ」て取り扱うとしています(北九州市「特例措置及びスライド条項適用に関する手続きについて」更新日 2026 年 8 月 18 日・2026-09-25 実読)。どちらの枠に入るかと様式は、発注者の告知で確かめます。

よくある質問⁠

Q1. インフレスライドは年に 1 回しか請求できませんか?⁠

1 回に限られてはいません。運用マニュアルは、直近の賃金水準の変更から次の変更までの請求を「1回を基本とする」としています。

中国地方整備局の FAQ No.12 は、これを「複数回のインフレスライドの申請を制限するものではない」と説明しています。

Q2. 単品スライドは、部分払いを済ませた材料や手持ちの在庫も対象になりますか?⁠

部分引き渡しや部分払を完了しているものは対象になりません(FAQ No.31)。適用が考えられる場合は、既済部分検査請求書などの様式に、部分払の出来高部分も対象にできる旨を記載するよう同じ回答が求めています。

在庫は証明数量に含めて整理できますが、対象になるのは当該工事で新規に購入した数量だけです(FAQ No.24)。

Q3. 写真や日報は証明書類になりますか?⁠

どちらも証明書類にはなりません。証明書類は納品書・請求書・領収書です(FAQ No.5)。

FAQ No.43 は「臨場検査や写真等での確認は必要ない。証明書類の確認により行う」としています。

日報は、搬入日と数量を証明書類と突き合わせるときの下敷きです。

Q4. 民間工事でもスライド条項は使えますか?⁠

その工事の請負契約書に、賃金や物価の変動で請負代金額を見直す定めがあるかを見ます。公共工事標準請負契約約款の 26 条が、民間工事にそのまま効くわけではありません。

まとめ: 次にやること⁠

  • 当該工事の契約書 26 条の「〇日」と、発注者のスライド運用・様式を確認する
  • 請求を考える工事は、基準日にしたい日の出来高を、出来高内訳書か実施工程表付き工事履行報告書で先に確かめる
  • 単品スライドを見込む材料は、搬入・購入の日と数量を、納品書・請求書・領収書とあわせて現場ごとに揃える

基準日の出来高と、材料を現場に入れた月の 2 つで、請求の中身が変わります。

納品書が月末にまとめて届く現場ほど、どの日に何をどれだけ入れたかは、後から並べ直しにくくなります。

現場名と搬入日を納品書の綴りに書き込む方法なら、現場が 1 つで搬入の回数が少ないうちは、綴りをめくれば日付と数量がそろいます。

掛け持つ現場が増えたなら、その日の搬入数量は直感日報の数値項目に入れた時点で、期間ごとの合計まで集計されます。

支給材料の受払を数量で残す様式は、現場発生品調書の記事で扱っています。

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※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、契約実務に関する助言ではありません。スライド条項の適用要件、受注者負担の割合、協議開始日や出来高確認の日数、提出書類と様式は発注者ごとに異なり、国土交通省の運用資料や FAQ も改定されます。請求の可否や算定の疑義は、その工事の契約書と発注者の運用基準を見たうえで監督員・発注者にご確認ください。引用した条文と運用は 2026-09-25 に実読した時点のものです。

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