工事事故報告書|発注者に出す様式と、労基署に出す死傷病報告
公開日: 最終更新日: 直感日報 編集部

工事現場で事故が起きたとき、発注者に出す工事事故報告書と、労働基準監督署に出す労働者死傷病報告は別の書類です。発注者に出したからといって、労働基準監督署への報告が済むわけではありません。
この記事でわかること
- 土木工事共通仕様書 1-1-1-34 は「工事の施工中に事故が発生した場合には、直ちに監督職員に連絡する」と定める(関東地方整備局)
- e-Gov 法令検索で労働安全衛生法・労働安全衛生規則を通しで見た範囲に、「工事事故報告書」の語はない(2026-09-18 当社実読)
- 労働者死傷病報告は安衛則 97 条 1 項で「遅滞なく、電子情報処理組織を使用して」報告する(e-Gov)
- 休業の日数が 4 日に満たないときは、その期間の最後の月の翌月末日までに四半期ごとに報告する(同 2 項)
- 添付資料には「事故発生当日から1週間程度前までの関連するKYミーティング記録、安全日誌、作業指示書等」が並ぶ(中国地方整備局)
事故が起きたとき出すものは 2 系統ある — 発注者に出すものと、労基署に出すもの【早見表】
事故のあとに出す書類は、発注者に出すものと労働基準監督署に出すものの 2 系統に分かれます。
| 出す先 | 出すもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 監督職員(発注者) | 直ちに連絡、工事事故報告書(速報は発注者の定め) | 土木工事共通仕様書 1-1-1-34/速報は発注者のマニュアル |
| 建設工事事故データベースシステム(SAS) | 登録対象となる工事事故の情報 | 同 1-1-1-34 |
| 所轄労働基準監督署長 | 労働者死傷病報告(電子で報告) | 労働安全衛生規則 97 条 |
名前が似ているぶん、片方を出した時点で終わったと思いやすいところです。出す先も、根拠になる文書も別々に決まっています。
「工事事故報告書」は契約図書の語 — 共通仕様書 1-1-1-34
「工事事故報告書」の出どころは、労働安全衛生法ではなく土木工事共通仕様書です。
関東地方整備局の版は 1-1-1-34 で、「受注者は、工事の施工中に事故が発生した場合には、直ちに監督職員に連絡する。また、建設工事事故データベースシステムの登録対象となる工事事故の場合、監督職員が指示する期日までに、工事事故報告書を提出し、建設工事事故データベースシステムに、工事事故に関する情報を登録する」と定めています(関東地方整備局「土木工事共通仕様書〔令和 8 年 3 月改定〕」1-1-1-34・2026-09-18 実読)。
期日は「監督職員が指示する期日までに」で、日数の定めはありません。
本記事で確認した労働安全衛生法・労働安全衛生規則の条文に、この語は出てきません。
条番号は発注者と版で動きます。千葉県の工事関係書類一覧表は工事事故速報を 1-1-1-29、工事事故報告書を 1-1-1-31 とし、中国地方整備局のマニュアルも 1-1-1-31 です(千葉県「土木工事書類作成マニュアル」〔令和 6 年 4 月〕工事関係書類一覧表、中国地方整備局「土木工事書類作成マニュアル」〔2024 年 3 月〕4-2-3・いずれも 2026-09-18 実読)。どの版が効くかは工事ごとに決まるので、設計図書で確かめてください。
条文の場所が分かったところで、実際には何をどの順で出すのでしょうか。
順番は「直ちに連絡 → 速報 → 報告書」— 速報の主な報告内容は 7 つ
発注者側の手順は、直ちに連絡し、事故等速報を出し、そのあとに事故報告書を出す順です。
中国地方整備局のマニュアル 4-2-2 は「工事の施工中に事故が発生した場合には、直ちに監督職員に連絡するとともに、事故等速報様式により提出するものとする。また、監督職員が指示する期日までに、事故発生報告書を提出しなければならない」と書きます(中国地方整備局「土木工事書類作成マニュアル」〔2024 年 3 月〕4-2-2・2026-09-18 実読)。
連絡は「電話、メール等で可」です。「なお、通報及び速報等は、状況を把握でき次第、段階的に行うものとする」ともあります(同)。
事故等速報は【様式施ー19】で、速報段階での主な報告内容として 7 つが挙がっています(同)。
- 事故発生日時
- 事故発生場所
- 被災者の状況(氏名、年齢、性別、職種、被災の程度、病院名など)
- 事故の概要
- 事故発生状況図、状況写真
- 事故経過報告
- 関係機関との対応内容報告
工事関係事故は、工事現場内及び工事現場に隣接する場所において、工事の施工に起因して工事関係者に死亡者、負傷者等の被害を生じさせたものです(同)。
公衆損害事故は、第三者に死亡者負傷者等の被害や物的損傷を与えたものです。現道上の施工中に一般通行車両が原因となって工事関係者に被害が生じた場合(いわゆる「もらい事故」)も、この定義に含まれるとされています(同)。
千葉県は改訂概要で、事故速報を別紙様式 9、工事等事故速報書を別紙様式 10 と記しています。一覧表の備考は「事故が発生した場合は、直ちに監督職員に通報する」です(前掲 千葉県マニュアル)。
事故報告書は受注者と発注者で書く欄が分かれている — 添付資料は事故の前からある記録
中国地方整備局のマニュアルでは、事故報告書の提出資料が 5 行に分かれています。
並ぶのは、事故等速報、事故報告書の発注者作成様式、同じく受注者作成様式、工事事故詳細調書【様式施-20】、その他の資料です(前掲 中国地整マニュアル 4-2-2)。
受注者が作るのは「監督職員から、事故発生報告書の作成を指示された場合」です(同)。
発注者作成様式のほうは、発注者が書く欄です(同)。
受注者が作る様式は 5 項目です(同)。
- 事故概要(事故発生日時・場所)
- 被災、被害状況
- 事故の経緯
- 警察との対応
- 労働基準監督署との対応
5 番目に労基署との対応の欄があるのが、この書類の位置づけです。
その他の資料も受注者が作り、位置図や平面図のほか「事故発生当日から1週間程度前までの関連するKYミーティング記録、安全日誌、作業指示書等」が並びます(同)。
同じ欄には「事故発生前の安全教育、新規入場者教育等の資料」もあります(同)。義務の所在は新規入場者教育の記事にあります。
どれも、事故が起きる前から現場にあった記録です。KYミーティング記録の位置づけはKY 活動の記事にあります。
記録があることと、事故が起きないことは別の話です。
添付に並ぶ資料のうち、KYミーティング記録・安全日誌・作業指示書は、その日のうちに書いてあれば足ります。その日の作業と気づきを 15 秒で提出できる直感日報(建設・店舗など現場チーム向けの日報管理サービス)なら、前の日付の分も現場名で引き出せます。
この 1 枚は、事故報告書を作ったり、データベースへの登録を代行したりする道具ではありません。労働基準監督署への報告も受け持たず、残せるのは、その日どこで何をして、どの機械を使い、どんな指摘を受けたかという事実だけです。
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ここまでは発注者に出す側の話です。労働基準監督署に出すものは、条文も出し方も別に決まっています。
労基署に出すのは別の 2 条文 — 97 条の死傷病報告と、96 条の事故報告
労働基準監督署に出す報告は、安衛則 97 条の労働者死傷病報告と、96 条の事故報告の 2 つです。
97 条 1 項は事業者に対し、労働者が労働災害等により「死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して」所轄労働基準監督署長に報告することを求めています(労働安全衛生規則 97 条・e-Gov 法令検索・2026-09-18 実読)。
報告事項は 12 号です。建設工事の作業に従事する請負人の労働者が被災したときは、1 号の労働保険番号に元方事業者の労働保険番号を書きます(同)。
4 号は当該工事の名称で、8 号には傷病の名称及び部位や当該職種における経験期間が入ります。11 号は発生日時、発生場所の所在地、発生状況及びその略図並びに原因です(同)。
2 項は「休業の日数が四日に満たないときは」として、四半期ごとの報告に切り替えます(同)。
区切りは 1 月から 3 月までのような四半期で、期限は「それぞれの期間における最後の月の翌月末日までに」です(同)。
紙の様式を探すと様式第二十三号に行き当たりますが、規則の様式一覧は「様式第二十三号及び第二十四号 削除」です(同)。
96 条は別の報告です。「事業者は、次の場合は、遅滞なく、様式第二十二号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない」と定めます(同)。
対象は人の死傷ではなく、物の事故です。一号イの「火災又は爆発の事故(次号の事故を除く。)」のほか、四号ではクレーンの逸走・倒壊・落下やジブの折損が挙がります(同)。
96 条の様式第二十二号は現に生きており、97 条とは対象も出し方も別です。
ただし 96 条 2 項は、97 条 1 項の報告と併せて出すときに、重複する部分の記入は要しないとしています(同)。
安衛法 100 条 1 項は、労働基準監督署長などが「厚生労働省令で定めるところにより」事業者に「必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる」と定めた権限の規定です(労働安全衛生法 100 条・e-Gov 法令検索・2026-09-18 実読)。
具体の報告事項は、この条文ではなく厚生労働省令の側にあります。
建設工事事故データベース(SAS)に登録する事故は 4 つ
登録が必要になるのは、中国地方整備局のマニュアルが挙げる 4 つの類型です(前掲 中国地整マニュアル 4-2-3)。
- 労働災害事故 — 工事作業が起因して工事関係者が死亡または負傷した事故
- もらい事故 — 第三者の行為が起因して工事関係者が死亡または負傷した事故
- 負傷公衆災害 — 工事作業が起因して第三者が死亡または負傷した事故
- 物損公衆災害 — 工事作業が起因して第三者の資産に損害を与えた事故で、第三者の死傷に繋がる可能性の高い事故
負傷の範囲は「※負傷の定義:休業4日以上。(ただし、直轄工事は休業1日以上が対象となる)」とされています(同)。
「本システムは、インターネット上で事故情報を入力・登録するもので、全国の公共工事で発生した事故データを蓄積し、再発防止対策の検討資料とするものである」と説明されています(同)。
ログインには「発注者から指示されたID及びパスワード」を使います(同)。
登録の要否は、当該工事の発注者の定めで確かめてください。
よくある質問
Q1. 発注者に事故報告書を出せば、労基署への報告は要りませんか?
別の条文で走る報告なので、発注者へ出しても労働基準監督署への報告は残ります。発注者への報告は共通仕様書、労働者死傷病報告は安衛則 97 条が根拠です。
出し方も、発注者へは指示された様式、労基署へは電子と分かれています。
Q2. 労働者死傷病報告は紙で出せますか?
本記事で確認した安衛則 97 条の条文には、書面で代える定めが置かれていません。1 項も 2 項も「電子情報処理組織を使用して」と書いています。
様式第二十三号は規則の様式一覧で削除されています。取扱いは所轄の労働基準監督署に確かめます。
Q3. けが人が出ていない事故でも報告は要りますか?
共通仕様書 1-1-1-34 は「工事の施工中に事故が発生した場合には」と書いています。工事関係事故の定義にも「工事関係者に死傷者等は発生していないが、建設機械が転倒・転落した場合も含む」とあります。
労働基準監督署の側にも、物の事故を対象にした安衛則 96 条があります。どこまでが対象になるかは、条文の要件と当該工事の契約図書で分かれます。
Q4. 事故報告書に新しく資料を作る必要はありますか?
中国地方整備局の提出資料一覧に並ぶのは、事故発生当日から 1 週間程度前までの既存の記録です。
ただし同じ一覧には「必要に応じ監督職員から作成指示を受けた資料」もあり、何を出すかは監督職員の指示で決まります。
まとめ: 次にやること
- 速報と報告書の様式番号が当該工事でどれになるかを、監督職員に確かめる
- 発注者への報告と、労働基準監督署への報告を、別の段取りとして持っておく
- その日の作業と気づきを、事故が起きる前から日付つきで残しておく
発注者への報告と労働基準監督署への報告は、走る条文も出し方も別々です。
事故のあとに 1 週間前の作業や指示をさかのぼると、記憶をたどる作業から始まります。
置き場は安全日誌、作業指示書の控え、現場のチャットと、いくつも挙がります。1 枚に残す項目は現場日報の書き方の記事の型に沿えば足ります。
直感日報が残すのは、日付と現場名がついたその日の 1 枚です。
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1 週間前までの記録も、日付順にさかのぼれる。使った機械も受けた指摘も、その日のうちに 1 枚へ。現場名やキーワードで後から引けます。無料で 14 日試す →クレジットカード不要・400 円/人/月・最低 5 名から
※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としています。報告の要否・様式・提出先は工事の発注者と契約図書で異なります。実際の工事では契約図書と関係法令の最新版を優先し、個別の取扱いは監督職員・所轄の労働基準監督署にご確認ください。