かぶり厚さ|何mm必要か、令79条と標仕と加工で数字が違う理由
公開日: 直感日報 編集部

かぶり厚さは 1 つの数字ではありません。下回れない最低ラインと、契約図書が定める最小と、加工のときに狙う値は、別々の文書から出てきます。
この記事でわかること
- 下限を決めているのは建築基準法施行令 79 条 1 項で、耐力壁以外の壁又は床 2cm、耐力壁・柱・はり 3cm、直接土に接する壁・柱・床・はりと布基礎の立上り 4cm、それ以外の基礎は捨コンクリートの部分を除いて 6cm(e-Gov)
- 同 2 項に、大臣が定めた構造方法を用いる部材と大臣の認定を受けた部材には適用しない、という例外がある(同)
- 標仕 5.3.5 (1) は「最小かぶり厚さは、特記による。特記がなければ、表 5.3.6 による」と、特記を先に置いている(標仕)
- 同 (2) の柱、梁等の加工に用いる値は最小かぶり厚さ + 10mm、(3) の組立後は最小かぶり厚さ以上(同)
- 土木の共通仕様書 1-3-7-4 は、スペーサを側面 1m² あたり 2 個以上・底面 4 個以上とし、その個数を段階確認で見る(関東地整)
かぶり厚さは何mmか — 法令・標仕・加工の3つの数字【早見表】
かぶり厚さの数字は 3 つの文書から出ていて、それぞれ答えている問いが違います。
| 出どころ | 数字の性格 | 代表値 |
|---|---|---|
| 建築基準法施行令 79 条 1 項 | 下回ってはいけない最低ライン | 壁・床 2cm/柱・はり 3cm/基礎 6cm |
| 標仕 5.3.5 (1)・表 5.3.6 | 契約図書の最小(特記が優先) | 土に接する基礎 60mm/屋外の柱・梁は仕上げなし 40mm |
| 標仕 5.3.5 (2) | 加工で狙う値(合否は最小以上) | 最小かぶり厚さ + 10mm(柱、梁等) |
標仕は公共建築工事標準仕様書(建築工事編)の略称で、建築物等の新築及び増築に係る建築工事に適用され、設計図書の 1 つになります(国土交通省 公共建築工事標準仕様書〔建築工事編〕令和 7 年版 1.1.1・2026-09-09 実読)。公共工事で先に効くのは、法令ではなくこちらの側です。
土木の工事はこの表に入りません。土木工事共通仕様書の鉄筋工の規定には、かぶり厚さの数値表そのものがないからです。
かぶり厚さとは — どこからどこまでの距離か
かぶりは、コンクリートの表面から鉄筋の表面までの最短距離です。
この定義をはっきり書いているのは土木の共通仕様書です。「鉄筋のかぶりとはコンクリート表面から鉄筋までの最短距離をいい、設計上のコンクリート表面から主鉄筋の中心までの距離とは異なる」とあります(関東地方整備局 土木工事共通仕様書〔令和 8 年 3 月改定〕第 1 編 共通編 1-3-7-4・2026-09-09 確認)。
わざわざ書き分けているのは、主鉄筋の中心までの距離と取り違える読み方があるからです。図面の寸法がどちらを指しているかは、部位ごとに確かめることになります。
検索でよく使われる「鉄筋のかぶり」も、指しているのはこの距離です。呼び方が変わるだけで、測る場所は変わりません。
法令が定めるのは最低ライン — 令79条が定める2〜6cmと、2項の例外
建築基準法施行令 79 条 1 項は、部位ごとに下回ってはいけない厚さを定めています。
耐力壁以外の壁又は床は 2cm 以上、耐力壁、柱又ははりは 3cm 以上です。直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分は 4cm 以上とされています(建築基準法施行令 第 79 条・e-Gov 法令検索・2026-09-09 確認)。
布基礎の立上り部分を除く基礎は、捨コンクリートの部分を除いて 6cm 以上です(同)。捨コンを厚さに数えないことは、法令の本文自体に書かれています。
2 項には適用除外があります。国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材と、大臣の認定を受けた部材が対象です(同)。
条件も同じ項にあります。水、空気、酸又は塩による鉄筋の腐食を防止し、かつ鉄筋とコンクリートとを有効に付着させることが挙げられています(同)。
そのうえで、1 項のかぶり厚さにしたときと同等以上の耐久性及び強度を有するもの、という枠がかかります(同)。
法令が答えるのはここまでです。実際に何mmで加工するかは、次の文書に移ります。
契約図書の最小かぶり厚さ — 標仕 表5.3.6 と「特記による」の順序
標仕が最初に指しているのは、表ではなく特記です。
5.3.5 (1) は「鉄筋及び溶接金網の最小かぶり厚さは、特記による。特記がなければ、表 5.3.6 による」と定めています(国土交通省 大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書〔建築工事編〕令和 7 年版」5.3.5・2026-09-09 実読)。
同じ項にただし書きもあります。柱及び梁の主筋に D29 以上を使用する場合は、主筋のかぶり厚さを径の 1.5 倍以上確保するように最小かぶり厚さを定めます(同)。
特記がないときに見る表 5.3.6 は、まず土に接するかどうかで分かれます。土に接しない部分のスラブと耐力壁以外の壁は、仕上げありで 20mm、仕上げなしで 30mm です(同)。
早見表に挙げた 40mm と 60mm も、この表の行です。屋外の柱・梁・耐力壁は仕上げがない場合の値、基礎は土に接する部分の値になります(同)。
表には注が 4 つ付いています。
- この表は普通コンクリートに適用し、軽量コンクリートには適用しない。塩害を受けるおそれのある部分等、耐久性上不利な箇所にも適用しない
- 「仕上げあり」とはモルタル塗り等の仕上げのあるものとし、鉄筋の耐久性上有効でない仕上げ(仕上塗材、塗装等)のものを除く
- スラブ、梁、基礎及び擁壁で、直接土に接する部分のかぶり厚さには、捨コンクリートの厚さを含まない
- 杭基礎の場合の基礎下端筋のかぶり厚さは、杭天端からとする
注 1 は、表を当てにできる範囲を先に区切っています。軽量コンクリートと塩害を受けるおそれのある部分は、この表の外です。
標仕自身も 1.1.1 (4) で、設計図書間に相違がある場合の適用の優先順位を、質問回答書・現場説明書・特記仕様書・別冊の図面・標準仕様書の順としています(前掲 標仕 1.1.1 (4)・2026-09-09 実読)。特記が表 5.3.6 より先に来るのは、この順序の一部です。
土木側の図書の順位と照査の範囲は設計図書の優先順位の記事にまとめてあります。
加工で狙う値は最小+10mm、組立後の合否は最小以上
同じ節の中で、加工のときに狙う値と、組み上がってから合否を見る値が分けて書かれています。
5.3.5 (2) は「柱、梁等の鉄筋の加工に用いるかぶり厚さは、最小かぶり厚さに 10mm を加えた数値を標準とする」です(前掲 標仕 5.3.5・2026-09-09 実読)。
10mm を足すのは加工に用いる値で、部位も柱、梁等に限られています。全部位の目標値として一律に足す定めとは書かれていません。
(3) は「鉄筋組立後のかぶり厚さは、最小かぶり厚さ以上とする」です(同)。狙う値が最小 + 10mm でも、組み上がってから見られるのは最小以上かどうかになります。
貫通孔まわりにも同じ基準が置かれています。(6) は、貫通孔に接する鉄筋のかぶり厚さを最小かぶり厚さ以上としています(同)。
ネットでよく見る「設計かぶり厚さ」という語は、標仕には出てきません。最小に施工誤差を足した値を指す言い方で、出どころは日本建築学会の指針の側です。
学会の指針と標仕は別系統です。数字を見比べるときは、どちらの文書の値を話しているかを先に決めることになります。
直感日報(建設・店舗など現場チーム向けの日報管理サービス)が扱うのは、かぶり厚さの数値そのものではありません。かぶり厚さを測ることも、足りているかを判定することもせず、その日どこの配筋が組み上がり、どの確認をいつ受けたかを日付つきで残すところまでです。
組立後に最小以上かどうかを見るなら、どの部位がいつ組み上がり、いつ検査を受けたかが日付ごとに残っている必要があります。その日の施工箇所と受けた確認をスマホから 15 秒で提出しておけば、あとから遡るときの日付は入力した時点で確定します。
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確認は打込み前と打込み後の2回 — 5.1.3 配筋検査と6.9.6の目視
かぶり厚さを見られる場面は、コンクリートを打つ前と打った後の 2 回あります。
1 回目は 5.1.3 の配筋検査です。主要な配筋は、コンクリートの打込みに先立ち、種類、径、数量、かぶり厚さ、間隔、相互のあき、位置等について、監督職員の検査を受けます(前掲 標仕 5.1.3・2026-09-09 実読)。
検査の項目にかぶり厚さが名指しで並んでいる点が、この節の読みどころです。打つ前に見るものが条文で決まっています。
2 回目は打込み後の 6.9.6 (4) です。かぶり厚さ不足の兆候の有無について目視で確認を行い、監督職員に報告します(同)。
兆候があった場合の順序も条文にあります。必要な措置を定めて監督職員の承諾を受け、承諾を受けた方法により補修を行い、補修後直ちに監督職員の検査を受けます(同)。
この承諾は、受注者の側から監督職員に求めるものです。打合せ簿の 6 区分での位置づけは工事打合せ簿の記事で確かめられます。
同じ 6 章には、脱型と養生の時計も並んでいます。そちらは型枠の存置期間の記事にまとめてあります。
ここまでは建築の工事の話です。土木の共通仕様書には、そもそも数値表がありません。
土木は数値表を持たない — スペーサの個数と段階確認で確保する
土木工事共通仕様書が定めているのは、かぶり厚さの数値ではなくスペーサの個数です。
1-3-7-4 の 3. は、設計図書に特に定めのない限り、鉄筋のかぶりを保つようスペーサを設置するものとしています(前掲 共通仕様書 1-3-7-4・2026-09-09 確認)。
個数まで決まっています。構造物の側面については 1m² あたり 2 個以上、底面については 1m² あたり 4 個以上です(同)。
その個数は自己申告で終わりません。個数について、鉄筋組立て完了時の段階確認時に確認を受けなければならない、と同じ項が続けています(同)。
材質にも定めがあります。型枠に接するスペーサは、コンクリート製あるいはモルタル製で本体コンクリートと同等以上の品質を有するものを使います(同)。
これ以外のスペーサを使う場合は、監督職員と協議します(同)。
段階確認そのものの様式と、どの工種でいつ受けるかは段階確認書の記入例の記事にあります。鉄筋組立て完了時は、その一覧表に並ぶ確認時期の 1 つです。
数値表がない分、土木側に残るのはスペーサをどこに何個入れ、いつ確認を受けたかという事実です。設計図書のかぶりが先にあり、それを保つ手段が条文に書かれている構造になっています。
よくある質問
Q1. スペーサは最小かぶり厚さと設計かぶり厚さのどちらで選びますか?
標仕は「設計かぶり厚さ」という語を使っていません。加工に用いる値を最小 + 10mm、組立後を最小以上と書き分けているだけです。
どちらの値で手配するかは、当該工事の契約図書と特記仕様書の指定によります。判断に迷う場面では監督職員に確かめてください。
Q2. ネットで見るかぶり厚さの数値が、標仕の表と合わないのはなぜですか?
出どころが違うためです。日本建築学会の指針には、最小かぶり厚さに施工誤差を足した値の体系があり、標仕の表とは別系統になっています。
公共建築工事で契約図書になるのは標仕の側です。数値を並べる前に、どの文書から取った値かを確かめてください。
Q3. 基礎の 6cm に捨コンクリートは入りますか?
入りません。令 79 条 1 項の本文と表 5.3.6 注 3 の両方が同じ扱いです。
Q4. 土木でも最小に 10mm を足しますか?
土木工事共通仕様書には、かぶり厚さの数値表も 10mm を足す定めもありません。確保するのは設計図書に示されたかぶりで、手段はスペーサの設置と段階確認です。
足すかどうかの前に、自分の工事の契約図書がどちらかを確かめることになります。
Q5. 鉄筋のあきも、かぶり厚さと同じ節ですか?
同じ節です。標仕 5.3.5 の節名は「鉄筋のかぶり厚さ及び間隔」で、あきは (4) に別の規定として置かれています。
あきの値は (4)、組立て作業そのものの安全は労働安全衛生の側の定めで、かぶり厚さとは別に見ることになります。
まとめ: 数字は3つ、確認は2回、土木は体系ごと別
- 特記仕様書にかぶり厚さの指定があるかを先に見る
- 加工図に使う値と、組立後に合否を見る値を分けて持つ
- 土木ならスペーサの個数を、段階確認を受ける前に数える
3 つの数字は同じかぶり厚さの話ですが、答えるべき問いも、かかる部位の範囲も違います。
引っかかるのは 3 番目です。配筋が組み上がる日と確認を受ける日は部位ごとにずれ、あとから遡ると日付がそろわなくなります。
置き場は工事日報でも、段階確認書の控えでも、手元の表計算でもかまいません。日報で受けるときの書き方は現場日報の書き方の記事に置いてあります。
施工箇所と受けた確認を、その日のうちに日付つきで残す先が直感日報です。
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どの配筋をいつ確認したかも、その日の日報に。どこの配筋が終わり、どの確認を受けたかを日付ごとに記録。数値は設定ゼロで集計。無料で 14 日試す →クレジットカード不要・400 円/人/月・最低 5 名から
※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としています。かぶり厚さの数値は当該工事の特記仕様書・設計図書が優先し、個別の工事の可否は監督職員の判断によります。引用した数値は建築基準法施行令、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和 7 年版、関東地方整備局 土木工事共通仕様書(令和 8 年 3 月改定)の記載時点のものです。